#893 くまのはなし
くまさんは歩く。
たくさん歩く。
雨の日も風の日も。
たまに2本脚で。
くまさんには友達がたくさんいる。
すれ違いざまに挨拶を交わせばもう友達だ。
子リス、うさぎさん、鹿の親子。
とにかくたくさんだ。
くまさんは何も食べない。
だってそれはなにかを奪うことだから。
誰かの命を。
誰かの営みを。
冬が来た。
降り積もる雪のど真ん中でくまさんは歩みをとめた。
それきりくまさんは動かなかった。
動けなかった。
くまさんに雪が積もる。
リスもうさぎも鹿も自分の家で体を温めあっている。
くまさんには雪が積もる。
意識は雪の中にとけていった。
春が来た。
鹿のお母さんは言った。
熊にはするどい爪があるから近づいてはいけません。
色んなものを刳りとるための爪なのだから。
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